essay

ヨーロッパの真ん中で、自分を取り戻し、愛を叫ぶ。

自分が信じていることについて、誰かに反対意見を言われてしまうと、
そして相手が、自信を持ってその意見を言ってくると、
私は、一瞬にして揺らいでしまうことがある。
相手に言われたことのほうが、正しい気がしてしまうからだ。

でも。
本当に相手は正しいのでしょうか?
それを鵜呑みにしていいのでしょうか?

自分が信じたいことを信じるために、自分をちゃんと持つために、
私が体験したことをお話ししたいと思います。

目次

ヨーロッパのど真ん中、ウッチという街で

ヨーロッパ大陸の中心は、ポーランドにあるウッチという町なんだそうだ。
そのウッチには、ポーランドで一番長い通りもあったり、上手くやれば観光名所になりそうなスポットもあるのに、
工業都市のウッチは「あまりきれいじゃない町」だと言われていて、あまりぱっとしない町。

そのヨーロッパの中心点も、なんの変哲も無いただのラウンドアバウトしかなく、ヨーロッパの中心というサインさえもない。
世界地図を見ながら、この中心点に行ったことがあるのね、
なんて考えたらとっても楽しくなるのに、実際の中心点は、なんの色気もない場所でしかない。

こんなウリがあるのに、なんで使わないんだろう。
考えれば考えるほど、なんだか勿体無い。
起業について学んだりしていた私は、何の関係もないのに、ウッチ観光協会になり、
ウッチのために戦略なんて考えたくなってしまう。でもその商売っ気のなさが、ポーランドの魅力なのかも。

さて、なぜそのウッチに行ったのかというと、ポーランドに住んでいた頃、
なぜなのかその町で、シャーマンワークのワークショップが開催され、それに参加したからだ。

私はドラマセラピーと心理療法の先祖は、シャーマニズムだと信じている。
シャーマニズムに興味を持ち始めた20歳の頃から、私はその世界をみてみたいと思っていた。

そんなシャーマンの技術を、現代の私たちが学べるようにしたのが、マイケル・ハーナー。
彼は、世界中のシャーマンを訪ね、シャーマンの行う仕事には、共通点があることを発見した。そ
して作り上げたのがシャーマン・ワーク。
ネオシャーマニズムとも知られている。
そのための学校も持っていて、シャーマンワーカー達が育っている。
そのマイケル・ハーナーの学校で学んだ人が、教えに来てくれるワークショップが、このウッチで開催されたのだ。

不調の原因は、パワーアニマルがいなくなっていたから?

ポーランドで研究をしている時に、ヨーロッパでは、シャーマンワークを簡単に受けられることを知ったのだが、
ちょうどその頃、私は毎月風邪をひくというとても辛い体調にあった。
風邪が治っては、しばらくたつとまた風邪をひく。
これを9ヶ月もやっていたので、「私の体は大丈夫なのだろうか?」と不安にもなっていた。

ポーランド生活は、楽しかったし、今まで仕事三昧と言えるほど忙しくしていた私には、
びっくりするほどゆったりとしたストレスレスな生活。
なぜこんなにも風邪をひくのかよくわからなかった。

その後、風邪をひかなくなったのだが、そのきっかけになったのは、
シャーマンワークだったのではないかと思うようになった。

イギリスでのシャーマンワークに参加し、その時に「パワーアニマルを取り戻す」
というワークをしたのだが、
実は、その「パワーアニマルを取り戻す」というワークをした後から、風邪はひかなくなっていたからだ。

つまり、9ヶ月の不調の原因は、
どうやら私の「パワーアニマル」という存在が、いなくなっていたからだったようなのだ。

パワーアニマルとは私たちが生まれてからずっと持っている、
守護霊的動物で、私たちの人生の展開とともに、違う動物に入れ替わったりするのだという。
風邪を引き始める前、私は、自分の仕事の中で大きな決断をしたことがあり、
それがきっかけでアニマルが入れ替わろうとして一時的にアニマルが不在になっていたのかもしれない。

なんにしても、風邪をひかなくなったので、私は新しいパワーアニマルに来てもらえたことが大きいと信じている。

それはあなたのパワーアニマルじゃないわ

さて、ウッチでのワークショップでは、私のようにすでにパワーアニマルを持っている人もいたり、
初めての人も、自分でパワーアニマルを見つけることができたので、
「もう一つ、パワーアニマルを見つけてもらう」というワークをすることになった。

それはペアになって、お互いのパワーアニマルを探しに行くというもの。
あくまでも2つ目のパワーアニマルを見つけに行くことが課題。
それなのに、私のペアの人は、英語があまりできなかったせいなのか、課題を勘違いしてしまった。
(ワークショップはポーランド語ではなく英語で行われていた)

実際にワークをした後のシェアリングで、
私がペアになった人は、「あなたには問題があるわ」という思い言葉から始めた。
「あなたのパワーアニマルは、違うものだったのよ。
あなたは間違って、違う動物をパワーアニマルだと思い込んでいるの」と、
新しくパワーアニマルを見つけて来たと話した。

それはネズミだった。ネズミがいけないわけじゃない。
でも、なんだかバカにされた気持ち。
ネズミのパワーだって、とても大きなものだと思う。
これが二つ目だと言われたら、私は何も思わずありがたく受け取ったと思う。

シャーマンたちも自分のパワーアニマルを人に話すことはあまりないそうなので、
あえてここでは私のパワーアニマルは書かないけれど、
彼女から、「そんな動物が、あなたのパワーアニマルなわけないじゃない」と言われた気持ちさえしてしまう。

1つ目のパワーアニマルを正すのではなく、
課題はあくまでも、2つ目のアニマルを見つけることだと私は説明したのだけれど、
彼女は自分が正しいとひかない。

彼女は、私が彼女のために見つけた動物を聞き、喜んでいたけれど、私は笑えず、複雑な気持ち。

周りを見ると、みんな「二つ目のアニマルがきて嬉しい!」と喜んでいる。
そういうシェアリングをしているのに、彼女は自分の間違いに気づいてくれない。
気づいてくれても、どうにもならないんだよね。
だって、彼女は「あなたのパワーアニマルは間違っていました」と言ってきたんだもの。

なんだろう、学校で育てていた朝顔が、私のだけ咲かなかった感じみたいに、一人だけ喜べない悲しい気持ち。

それにしても、彼女はどうしてこんなにも自信たっぷり言えるんだろう。
そして私はどうしてこんなにも簡単に自信をなくしちゃうんだろう。

催眠状態の中で、ありありと鮮明に見ていたはずの私のパワーアニマル。
そしてそのおかげで風邪までひかなくなったというのに。

 

私はすっかり悲しい気持ちになり、そのワークの後からしばらくひきずっていた。

ワークショップでは、先生が参加者の一人を選んでワークをしてくれたのだが、
ありがたいことに私を選んでもらえて、私は先生の素晴らしいワークを体験することができた。

だから、このワークショップに参加してよかったと思ってはいたけれど、
パワーアニマルを奪われてしまった悲しみから、私はなかなか気持ちをたてなおせずにいた。

本当のメッセージ

ワークショップが終わり、私はウッチの駅にいた。
私が住んでいたクラクフまでは電車で数時間なのだけれど、電車の本数が少なく、
私はこの何にもないウッチの駅で3時間ほど電車を待つ羽目になった。

駅の前にあるのは、小さな寂れたダイナーだけ。
まだ冬で寒いポーランド。
駅構内では寒すぎたので、仕方なく、ダイナーでお茶を飲んだり、食事をしながら、電車を待つ。

そばにはうるさいティーンエイジャーのグループ。

私は自分に言い聞かせていた。「私が見つけたパワーアニマルは、本物。私は自分を信じていいんだよ」と。

しばらくすると、若者たちがいなくなり、彼らが陣取っていた大きなソファが空いたので、私はそこに移動した。
はあ、とため息をつきながら、自分のパワーアニマルについて考えていた。

すると、目の前に置かれていた大きなテレビで、新しい番組が始まった。
その番組は、まさに私のパワーアニマルのドキュメンタリー。

びっくりしながら、ホッとした。
パワーアニマルは、現実の世界で、いろいろな形をとって姿を現してくれる。
こうやってテレビや写真や、人形などの形をとって、「ここにいるよ」と現れてくれる。
今回私は、試されていたんだ。

シャーマンワークは、想像の世界を扱うものとも言えるのだが、
私は、自信を持って「あなたのパワーアニマルは間違っています」と言ってきた人を前に、
自分が信じてきたことを、信じられなくなっていた。

「何言ってんの。あなたが間違ってるのよ」と相手に反論してもいいはずなのに、そんな発想さえなかった。

よく考えてみれば、これがどれほどおかしなことがわかるはず。

そもそもこのパワーアニマルを探しに行くワークというのは、目を閉じて、自分が催眠状態で見えてくるイメージの中行われる。

つまり簡単に大雑把に言ってしまえば、想像の産物だ。
想像力には、誰が正しいとか間違っているとかがない世界。
それなのに、「私が想像したことが正しい」と言って来たネズミ女を、
「あなたの想像が正しいのね」と私は受け入れてしまったのだ。

今から何かを思い浮かべてください。というお題を出されて、私はぱっと狸を思い出したとする。
ところが誰かが虹を思い浮かべた。
そして「はい、正解は虹です!」と言われてしまうような、かなり不条理な結論。
なのに、なんだって私はネズミ女の言葉を信じちゃったんだろう!

あなたの心にあることが、真実。それを信じればいい。

私は私の信じていることを、信じていいんだ。
そのドキュメンタリーを見ながら、確信した。
私たちの周りにはたくさんのメッセージがある。

自分を信じようとしても、それを邪魔する考えが出てきたり、誰かに何かを言われて自信が持てなくなってしまったりすることもある。

それでも、私たちは、自分が信じたいことを信じていい。
自分が信じたいことを信じることで自信は生まれるし、それが私たちの人生を作っていく。

今回は、私が一番苦手な形で、試されたんだな。
そうわかったら、自分のパワーアニマルに対して揺るぎない自信が持てるようになった。
やっぱり私の風邪を治してくれたんだもの。これからもよろしくね。

ウッチを思い出すと、私はいつでもあのダイナーのテレビを思い出す。

ヨーロッパの中心は、私が自分の中心を取り戻した場所。なかなかいい場所だったよね。

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