Mission

私の、母の、祖母の、女性の物語を癒す

いろんなことがあって大変だった2020年も、12月になりましたね。
この年は歴史的にもずっと忘れられない年になりますね。

この秋、とても素敵な物語たちに出会いました。

一つは、「ザリガニの鳴くところ」
そしてもう一つは、岩瀬晶子さんというハリウッド映画にも出演された女優さんが主宰されている
日穏(びおん)という劇団の「初恋」という舞台です。

岩瀬さんは演劇でつながる知人で、彼女の舞台を見たいなーと思っていたところ、
コロナの影響でライブ配信があり、フランスにいても見ることができたのです。
そしてその彼女が書かれた物語もとてもいいのです。(彼女は脚本家でもあります)

物語は、私たちを癒す大きなパワーがある。
物語は、私たちを繋げてくれる力がある。

これがドラマセラピーのセラピー要素にもなるのです。

ザリガニの鳴くところや初恋から、その物語のパワーや、
女性として感じることがたくさんあったので

今日はそのことについて書いてみたいと思います。

目次

誰にでも、物語があるということ

岩瀬さんの書かれた「初恋」は、平成20年と、戦争中、戦後すぐの女性たちが出てくる、
甘酸っぱい「初恋」の物語です。

誰にとっても訪れた、初めての恋が、
どれもハッピーエンドではない形だけれど、懐かしく大切な思い出として描かれています。

そのどれもが愛おしい。
それぞれの物語は、女性目線だけでなく、男性目線でも描かれていますが、
私はやっぱり女性として見ていたので、女性たちの思いを受け止めて、
歴史的な女性たちの姿も感じていました。

前回のブログでも書きましたが、
私たちの今は、歴史的な女性たちの戦いや我慢の上にあるのだと思います。

親に先立たれ、戦時中15歳で娼婦になった女性は、
初恋の人のことを思いながら生きています。

辛い日々が続き、彼女の優しさや可愛らしさも埋もれていってしまう中で、
彼女の中にあった
大切な初恋のストーリー。
それがきっと彼女の心を支え続けてくれるのでしょう。

 

私の祖母の妹たちは、戦時中にお年頃で、
お相手候補たちははみんな戦争にいっていて、結局結婚ができなかったそうです。

恋をしたくてもできなかった時代。

千代子さんの恋人は戦争に行き、そこできっと心が傷ついてしまったのでしょう、
結婚も夢も諦めて、行方知らずになってしまい、
千代子さんはそんな彼を思いながら障害一人で生きていきます。

結ばれたいけれど、結ばれなかった。

そんな辛い恋の記憶も、
このたくさんの女性たちの記憶の中にあるのです。
そして私たちの今は、彼女たちのストーリーの続きなのです。

彼女の物語を癒すために、私を癒す

2019年から2020年にかけて、私はワークショップやカウンセリングなどの仕事の中の
裏テーマとして「女性を癒す」ことを意識していました。

私たちが、恋愛、結婚、セックス、出産、育児などと向き合うとき、
私たちの先輩たちの記憶や体験が、
私たちにも大きく影響を与えていると思っているからです。

実際、私が提供しているワークの一つでもある「ヒーリングコード」は
先祖や周りから受け継いだ記憶も、私たちの心身の問題に影響を与えるとしていて、
実際にその古い歴史的記憶を癒すことで、問題が解決したという報告も多いのです。

というわけで、
私自身が自分の癒しのためにワークをしたり、
クライエントさんたちのワークを一緒にしているとき、「女性を癒す」ということも、
一緒に行っていました。

お母さんにも、おばあちゃんにも、親戚のおばちゃんにも、
「そんな甘酸っぱい初恋」はあったし、
「女性としての願い」もたくさんあったはず。

そうやって思い直してみると、
今まで見ていたのとは全く違う、「一人の女性」としての姿が
見えてきます。

私とは別の人物だったとしても、「女性」という大きな枠の中で繋がっていて、
しかも私の命につながっている、祖母や母だったとしたら、
彼女たちの物語を癒しながら、私の物語へと引き継いでいくこともできるのではないかと思います。

そうやって、集合的に、私たちが女性として癒され、女性として幸せになっていくことができたら、
もしかしたら、
「初恋」の中にいた、娼婦として一人で生きている40歳の桃子さんも、
出征して心が荒み変わり果てた恋人を思いながら独身で生きた千代子さんも、
癒されるのかもしれません。

舞台「初恋」で描かれた4人の女性たちを全て演じたのが、岩瀬晶子さん。
この4人を見事に演じ分けていたこともすごいですが、
私は岩瀬さんが一人で4人をやってくれたことが、余計に心に響きました。
さらに、4つの物語が、春夏秋冬と順番に描いていくようでいて、
時代が前後することも、私にはとても感動しました。

同じ人ではないけれど、同じ時代でもないけれど、
物語を通して私たちはつながれるし、

その物語を通して、悲しみも喜びも共有できる。
そして、その願いを受け継ぎながら、自分も相手も癒していくことができる・・・

女性の歴史を、自分につながるストーリーと考えてみた時、
物語を共有することで、

女性の癒しが起きるのではないかと私は思っています。

女性という自然を生きる

「ザリガニの鳴くところ」は2019年にアメリカで一番売れた小説だと言われているらしく、
私もたまたま、友人が紹介しているのを見て、
無性に読みたくなり、すぐに読んでみた本です。
そして読み始めた途端、止められなくなるくらい、はまりました。

この物語は、親にも兄弟にも見捨てられて、
一人で湿地帯の中で生きていくカイアという女性のお語です。
この物語のすごいところは、殺人事件の真相を解いていくミステリー的な部分と、
湿地帯の美しさを描いている部分と、
そしてカイアという、虐待され家族からも捨てられて
自然の中で一人で生きていった女性の人生の物語の要素が重なっているところです。

正直、こんな風にたった一人で生きた経験はないから、
カイアと自分を重ねることはできなかったけれど、
カイアの持つ、自然を母として自然と共に生きることの強さと、その中にある孤独は、
私たちの根源的な尊い要素のような気がして、
私は、カイアという存在にのめり込んだ気がします。
カイアを知りたくて、カイアに幸せになってほしくて、カイアと一緒にいたくて物語を読み進めていった感じ。

カイアは完璧に、自然と一緒に、自然の中で、自分の自然を生きていたと思います。
自然は、何があってもそれをただ受け止めてくれている。
でも、自然は、時にとても残酷で、それもいいとか悪いとか、そんなのものを超えて、ただ存在している。

自然という大きな世界では、善も悪もなくて、全てがそれでいい。
私たちは、本当に愛を求めているし、ただ愛の中で生きていきたいだけなのよね。それだけでいい。
本を読んで最初に思ったことです。

 

自分と重なる要素がほとんどないカイアなのに、
私は、同じ女性というだけで、
カイアと繋がり、カイアを体験できた感じがします。
その体験から、ほんのり何か自然のもつ厳しさと愛を感じられた気がします。
そして確実に、カイアの物語は、私の中に吸収されました。

著者の方の自然を描く力も凄かったけれど、これが物語の持つ力!と感動した作品でした。

 

母から私へ、そして私から娘へ、私たちは物語を通して、つながっていける

女性の物語。
私一人の物語も、これから娘へ、そして娘の子どもたちへと、
つながっていく一つの点でしかないけれど、

こうやって、私たちは物語を通して
つながっていけるのかもしれない。

私は、フェミニストでもなんでもないけれど、
でも、歴史上の女性の先輩たちが、私たちの生き方を作ってくれたと思っています。
そして、その「女性の生き方を開拓していくバトン」みたいなものを
受け取っているのだと思っています。

でもその時に、彼女たちの物語を受け取ってみることで、
私の中に、
なんだか大きな力が湧いてくることも感じられるし、
今まで書いていたような、母への罪悪感も、
同じ女性として「幸せになろうね」という共通の願いみたいなものに変わるような気がします。

祖母から、母へ、母から私にきた、女性の物語。
私も娘に渡すために、紡いでいきたいなと思います。

今日もお読みくださりありがとうございました。

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